令和4年度 決算審査の結果 公営企業会計
1.審査の対象
令和4年度白石市水道事業会計決算
令和4年度白石市下水道事業会計決算
令和4年度白石市外二町組合病院事業会計決算
2.審査の期間
令和5年7月12日から令和5年8月10日まで
3.審査の方法
この決算審査にあたっては、地方公営企業法第30条第2項の規定により、市長から審査に付された決算書類(決算報告書、損益計算書、剰余金計算書、剰余金処分計算書、欠損金処理計算書、貸借対照表)並びに決算附属書類(事業報告書、収益費用明細書、固定資産明細書、企業債明細書)が、地方公営企業法その他関係法令に準拠して作成され、かつ、企業の財務状況および経営成績を適正に表示しているかどうかについて審査した。
審査にあたっては、関係帳票、証拠書類の提出を求め、さらに経営内容の動向を把握するため、計数分析による比較検討を行うとともに、関係責任者の説明を聴取した。
なお、白石市外二町組合病院事業会計の決算審査については、令和5年3月31日をもって同組合が解散し、構成市町による協議により組合解散後の事務はすべて白石市がするものと定められたことから、地方自治法施行令第5条の規定に基づく普通地方公共団体の廃置分合があった場合の事務継承の規定を、同組合についても地方自治法第292条に基づいて準用し、白石市において監査委員の審査に付したものである。
4.審査のまとめ
1.水道事業会計
令和4年度の経営成績は、総収益が8億2,490万余円で、総費用は7億5,714万余円となり、差し引き6,776万余円の純利益を計上し、3年連続の黒字決算となった。
この結果、純利益に前年度繰越利益剰余金7億3,127万1千余円を加え、その他未処分利益剰余金変動額1,500万円を差し引いた当年度未処分利益剰余金は、7億8,403万2千余円となった。これに減債積立金1億4,271万円と建設改良積立金8,600万円を合わせた利益剰余金では10億1,274万2千余円となった。
利益計上の主な要因は、収益においては、令和4年3月16日に発生した福島県沖地震に対する被災者支援として全世帯の4月分基本料金の5割減額を実施したほか、当該地震に伴う漏水世帯対象の減免申請の増加等により、給水収益が前年度と比べ、2,081万2千余円減少するなど営業収益は2,220万2千余円の減少となった。一方、費用においては、更新工事等に伴う除却費を計上した資産減耗費が1,425万9千余円、総係費が741万7千余円減少したことによる。
また、貸借対照表を前年度と比べると、資産の部は、主に流動資産の増により1億2,409万3千余円増加し、50億6,839万6千余円となった。負債の部については、主に流動負債の増により4,474万2千余円増加し、22億2,495万3千余円となった。資本の部については、主に剰余金の増により7,935万1千余円増加し、28億4,344万2千余円となった。
水道事業の経営基盤を示す各指標を見ると、構成比率では自己資本構成比率が0.24ポイント上昇し67.86%となるなど、経営の安全性が高まっているといえる。財務比率では自己資本に対する負債の割合を示す負債比率は、0.52ポイント減少し47.37%で比較的健全な運営がなされている。企業活動の成果を表す収益率では、純利益計上の影響により、総括的な収益の割合を示す総収支比率や、業務活動の能率を示す営業収支比率などが低下しているものの、引き続き良好な事業経営が行われているといえる。
また、1立方メートル当たりの給水原価は251.91円、供給単価は259.2円で、7.29円の販売益となり、昨年度に続き販売益を出している。
企業債の状況を見ると、借入額が8,380万円、償還額が7,386万3千余円で、差し引き993万6千余円増加し、年度末企業債残高は13億9,151万4千余円となった。
年間の給水状況を見ると、給水戸数13,597戸、30,570人に供給している。これは、前年度と比較すると、給水戸数は25戸、給水人口は524人減少している。
料金収益となる有収水量は287万8千立方メートルで、前年度と比べ2万6千立方メートルの減少となっている。
有収率は77.49%(前年度77.84%)と宮城県内事業体平均89.1%(宮城県食と暮らしの安全推進課ホームページ 令和2年度データ)と比べて依然として低水準にあり、これが経営を圧迫する要因の一つと考えられることから、引き続き漏水の原因や地区の特定を行い、有収率の向上を図っていただきたい。
このように、当年度は構成比率、財務比率、収益率の各指標において良好な状態にあることが認められ、効率的な事業運営と経営基盤の安定に努められている点は評価できる。
一方で、水道事業を取り巻く状況は厳しく、少子高齢化により給水人口は今後さらに減少していくものと思われ、給水収益の動向を踏まえた具体的な対策が今後の課題といえる。さらに、水道施設の老朽化対策、耐震化の推進、危機管理は、安心安全な水道水を安定供給するために必要不可欠であることから、将来の財政負担の軽減と平準化などを図りながら、計画的で効率的な財政運営に努めることが望まれる。
従って、令和3年3月に策定した「白石市水道ビジョン」に基づき、基本理念である「安心・安全で将来に受け継げる水道」を目指し、中長期的な経営戦略のもと、施設更新の平準化やダウンサイジングによる事業費の縮減を行い、サービスの提供を安定的に継続できるよう努めるとともに、事務事業の効率化による経費の節減を図るよう強く望むものである。
2.下水道事業会計
令和4年度の経営成績については、総収益は9億3,183万8千余円で、総費用は8億3,176万9千余円となり、前年度よりも2,067万6千余円多い1億6万9千余円の純利益を計上することとなった。
この結果、純利益から前年度繰越欠損金10億5,461万6千余円を差し引き、その他未処分利益剰余金変動額を加えた当年度未処理欠損金は、9億5,706万9千余円となった。
事業別に見ると、公共下水道事業では、総収益は8億4,563万5千余円で、総費用は7億3,487万5千余円となり、差し引き1億1,076万余円の純利益となり、農業集落排水事業では、総収益は8,620万2千余円で、総費用は9,689万3千余円となり、差し引き1,069万余円の純損失となった。
利益計上の主な要因は、収益においては、下水道使用料など営業収益が前年度と比べ1,424万6千余円、特別利益が5,415万2千余円減少したものの、一方、費用においても、資産減耗費などの営業費用が2,339万1千余円、特別損失が5,931万1千余円減少したことによるものと思われる。
また、貸借対照表を前年度と比べると、資産の部は、主に固定資産の減により6億1,192万6千余円減少し、164億41万9千余円となった。負債の部については、主に固定負債の減により8億8,667万7千余円減少し、165億4,401万5千余円となった。資本の部については、主に資本金の増により2億7,475万余円増加し、1億4,359万6千余円のマイナスとなった。
下水道事業の経営基盤を示す各指標を見ると、構成比率では自己資本構成比率が1.93ポイント上昇し55.86%となり、企業債未償還残高も着実な減少が図られているものの、良好とまではいえない。財務比率では固定比率、固定長期適合率ともに100%を上回っており、長期的な資本の枠を超えての投資が行われていたことにより、依然として厳しい状況となっている。収益率では、純利益計上の影響により、総括的な収益の割合を示す総収支比率が3.49ポイント増加して112.03%となったものの、営業収支比率は80.48%であり営業損失を営業外収益等で補っている状態であることが窺える。
企業債の状況を見ると、借入額が2億6,680万円、償還額が7億7,650万余円で、差し引き5億970万余円減少し、年度末企業債残高は71億8,435万9千余円となった。
下水道事業の普及状況は、全体で処理区域内人口23,263人に対し、水洗化人口20,961人で、水洗化率は90.10%となり、前年度より0.38ポイント上昇している。年間総処理水量は275万3千余立方メートル、年間総有収水量は254万9千余立方メートルとなり、有収率は92.58%で、前年度より0.93ポイント減少している。
建設改良事業としては、東町三丁目地区の都市計画道路工事に伴う下水道管移設工事に着手したほか、緑が丘地区などのマンホール蓋更新工事、市内3箇所の公共ます設置工事、6箇所のマンホールポンプ監視通報装置更新工事などを行った。
このように、当年度は構成比率、財務比率、収益率の各指標において良好な状態にあるとはいえない状況が認められる。さらに、今後の水洗化人口の減、有収水量の減に伴い使用料収入も減少していくことが予想されている一方、近い将来、老朽施設の増加による改築需要は増加していくことが見込まれ、財政状況はより一層厳しさを増していくものと思われることから、引き続き財政収支計画に基づく確実な事業の推進に努めることが望まれる。
よって、今後とも令和3年3月策定の「白石市下水道ビジョン」に沿って、BCPの策定と災害対応力の強化や、ICT(情報通信技術)の活用などを計画的に進めるとともに、現在進められているスマートインターチェンジ周辺整備に伴う各事業が、本市のさらなる市勢発展に繋がるよう、効率的かつ効果的な下水道事業の推進を図られるよう願うものである。
3.白石市外二町組合病院事業会計
令和4年度の患者の取扱状況をみると、延べ入院患者数は31,330人で前年度と比較して1,873人(5.64%)の減少、延べ外来患者数は87,076人で4,414人(4.82%)の減少となり、全体では118,406人で6,287人(5.04%)の減少となった。また、病床利用率は0.82ポイント減少し43.13%となった。
医業収益は、入院収益では患者数の減少に伴い前年度と比較して1億2,259万余円(9.85%)の減少、外来収益では患者数は減少しているものの一人当たりの診療報酬単価の増加により774万6千余円(0.70%)の増加となり、医業収益合計では1億2,741万余円(4.59%)の減少となった。収益全体では、33億6,922万2千余円となり前年度より4,156万9千余円(1.25%)の増加となった。
医業費用は、組合解散に伴う賞与引当金繰入額の減少、償却資産が耐用年数を迎えたことによる減価償却費の減少などにより、2億3,231万5千余円(6.08%)の減少となった。費用全体では、38億9,392万7千余円となり、前年度より2億4,882万5千余円(6.01%)減少したものの、本年度の純損失は、5億2,470万5千余円となった。
経営分析の代表的な指標を見ると、総収支比率、医業収支比率は僅かに良化しているものの依然として100%を下回っており、また、固定比率及び流動比率は悪化していることから、財政状況は極めて逼迫している状況にあると言える。
公立刈田綜合病院は、平成14年に新病院に移転以降、組合構成市町の白石市、蔵王町、七ヶ宿町からの多額の繰入を前提とした経営が続いていた。
また、人口減少、高齢化に伴う診療体制や経営形態の見直しについて改革プランを定め経営の改善を図ってきたが、令和2年度決算においては、地方財政法に基づく資金不足等解消計画の策定を余儀なくされた。その後、組合構成市町において、病院の経営形態を含めた抜本的な改革が必要との結論に達し、組合を解散して白石市が病院事業を承継する合意がなされ、抜本的な意識改革と組織改革のため、指定管理者制度を導入し公設民営化を実施することとなったものである。
令和5年4月から、公立刈田綜合病院は「住民のための病院づくり」「地域ニーズに的確に対応した病院づくり」「医師・看護師をはじめとする医療従事者の確保・育成」をコンセプトに掲げ、市立病院として新たなスタートを切っている。経営健全に向けては一定期間を要するものであるが、総合診療科の開設や常勤医師の増員、救急患者の24時間受け入れなど、一定の成果が出ているものと思われる。
今後とも、みやぎ県南中核病院との「仙南地区地域医療構想連携プラン」を推進し、市民目線の地域医療のさらなる充実を図り、地域住民のための病院としての役割を果たしていくため、指定管理者と市がしっかりと連携しながら病院運営に取り組んでいかれることを切に望むものである。