令和3年度 決算審査の結果 公営企業会計
1.審査の対象
令和3年度白石市水道事業会計決算
令和3年度白石市下水道事業会計決算
2.審査の期間
令和4年7月12日から令和4年8月6日まで
3.審査の方法
この決算審査にあたっては、地方公営企業法第30条第2項の規定により、市長から審査に付された決算書類(決算報告書、損益計算書、剰余金計算書、剰余金処分計算書、欠損金処理計算書、貸借対照表)並びに決算附属書類(事業報告書、収益費用明細書、固定資産明細書、企業債明細書)が、地方公営企業法その他関係法令に準拠して作成され、かつ、企業の財務状況および経営成績を適正に表示しているかどうかについて審査した。
審査にあたっては、関係帳票、証拠書類の提出を求め、さらに経営内容の動向を把握するため、計数分析による比較検討を行うとともに、関係責任者の説明を聴取した。
4.審査のまとめ
1.水道事業会計
令和3年度の経営成績は、総収益が8億5,264万4千余円で、総費用は7億7,871万7千余円となり、差し引7,392万6千余円の純利益を計上し、2年連続の黒字決算となった。
この結果、純利益に前年度繰越利益剰余金6億5,734万5千余円を加えた当年度未処分利益剰余金は、7億3,127万1千余円となった。これに減債積立金1億4,271万円と建設改良積立金8,600万円を合わせた利益剰余金では9億5,998万1千余円となった。
利益計上の主な原因は、収益においては昨年度に実施した新型コロナウイルス感染症で影響を受けた全世帯への基本料金の減免がなく、給水収益が前年度と比べ、4,926万余円増加したものの、減免を補てんする補助金もなく、事業収益は2,323万8千余円の減少となった。一方、費用においては、昨年度に引き続き原水及び浄水費が減少したことに加え、建設改良工事等に伴う資産減耗費が2,058万1千余円、総係費が976万5千余円減少したことによる。
また、貸借対照表を前年度と比べると、資産の部は、主に流動資産の減により2,021万3千余円減少し、49億4,430万2千余円となった。負債の部については、主に流動負債の減により1億2,414万余円減少し、21億8,021万1千余円となった。資本の部については、主に剰余金の増により1億392万6千余円増加し、27億6,409万1千余円となった。
水道事業の経営基盤を示す各指標を見ると、構成比率では自己資本構成比率が2.3ポイント上昇し67.62%となり、経営の安全性がより高まっているといえる。
財務比率では流動比率が63.46ポイント上昇し439.34%と大きく上昇しており、短期支払能力は良好な状態を維持している。収益率では、純利益計上の影響により、総括的な収益の割合を示す総収支比率が1.51ポイント増加して109.49%、業務活動の能率を示す営業収支比率が12.19ポイント増加して106.02%となっており、引き続き良好な事業経営が行われているといえる。
また、1立方メートル当たりの給水原価は250.30円、供給単価は264.04円で、13.74円の販売益となった。販売益を出したのは平成29年度以来4年ぶりである。
企業債の状況を見ると、借入額が2,500万円、償還額が6,035万9千余円で、差し引き3,535万9千余円減少し、年度末企業債残高は13億8,157万7千余円となり、順調に負債を減らしているといえる。
年間の給水状況を見ると、給水戸数13,622戸、31,094人に供給している。これは、前年度と比較すると、給水戸数は42戸、給水人口は515人減少している。
料金収益となる有収水量は290万4千余立方メートルで、前年度と比べ6万9千余立方メートルの減少となっている。
有収率は77.84%(前年度77.86%)と宮城県内事業体平均89.1%(宮城県食と暮らしの安全推進課ホームページ 令和2年度データ)と比べて依然として低水準にあり、これが経営を圧迫する原因の一つと考えられることから、引き続き漏水の原因や地区の特定を行い、有収率の向上を図っていただきたい。
このように、当年度は構成比率、財務比率、収益率の各指標において良好な状態にあることが認められ、効率的な事業運営と経営基盤の安定に努められている点は評価したい。
一方で、水道事業を取り巻く状況は厳しく、少子高齢化により10年前の平成24年度の給水人口で10.42%、給水収益で9.37%減少しており、今後さらに減少していくものと思われ、給水収益の動向を踏まえた具体的な対策が今後の課題といえる。さらに、水道施設の老朽化対策、耐震化の推進、危機管理は、安心安全な水道水を安定供給するために必要不可欠であることから、将来の財政負担の軽減と平準化などを図りながら、計画的で効率的な財政運営に努めることが望まれる。
このような状況の中で、令和3年3月に策定した「白石市水道ビジョン」に基づき、災害時に業務を継続して実施していけるようBcp(業務継続計画)の策定に着手したほか、更新されていない管路の更新延長を年間3kmと定め効率的な更新を行っていくとしている点は評価できる。
今後とも「安心・安全で将来に受け継げる水道」を目指し、中長期的な経営戦略のもと、施設更新の平準化やダウンサイジングによる事業費の縮減を行い、サービスの提供を安定的に継続できるよう努めるとともに、事務事業の効率化による経費の節減を図るよう強く望むものである。
2.下水道事業会計
令和3年度の経営成績については、総収益は10億897万7千余円で、総費用は9億2,958万4千余円となり、前年度よりも3,021万7千余円少ない7,939万3千余円の純利益を計上することとなった。
この結果、純利益から前年度繰越欠損金11億3,400万9千余円を差し引いた当年度未処理欠損金は、10億5,461万6千余円となった。
事業別に見ると、公共下水道事業では、総収益は9億2,158万7千余円で、総費用は7億7,370万9千余円となり、差し引き1億4,787万8千余円の純利益となり、農業集落排水事業では、総収益は8,738万9千余円で、総費用は1億5,587万5千余円となり、差し引き6,848万5千余円の純損失となった。
利益計上の主な原因は、収益においては公共下水道事業の営業収益が前年度と比べ、219万2千余円減少したものの、特別利益が薬師堂地区農業集落排水施設を廃止し公共下水道事業に統合したことなどにより2,545万余円増加した。一方、費用においては、公共下水道事業の営業費用・資産減耗費が薬師堂クリーンセンター撤去により1,754万5千余円増加したものの、総係費が2,769万4千余円、営業外費用の支払利息及び企業債取扱諸費が842万5千余円減少したことによるものと思われる。
また、貸借対照表を前年度と比べると、資産の部は、主に固定資産の減により5億7,634万7千余円減少し、170億1,234万5千余円となった。負債の部については、主に固定負債の減により6億5,575万余円減少し、174億3,69万2千余円となった。資本の部については、主に剰余金の増により7,939万3千余円増加し、4億1,834万7千余円のマイナスとなった。
下水道事業の経営基盤を示す各指標を見ると、構成比率では自己資本構成比率が1.14ポイント上昇し53.93%となり、企業債未償還残高も着実な減少が図られているものの、良好とまではいえない。財務比率では固定比率、固定長期適合率ともに100%を上回っており、長期的な資本の枠を超えての投資が行われており、依然として厳しい状況となっている。収益率では、純利益計上の影響により、総括的な収益の割合を示す総収支比率が3.62ポイント減少して108.54%となったものの、営業収支比率は79.88%であり営業損失を営業外収益等で補っている状態であることが窺える。
企業債の状況を見ると、借入額が3億2,990万円、償還額が7億6,778万4千余円で、差し引き4億3,788万4千余円減少し、年度末企業債残高は76億9,405万9千余円となった。
下水道事業の普及状況は、全体で処理区域内人口23,625人に対し、水洗化人口21,197人で、水洗化率は79.72%となり、前年度より0.14ポイント上昇している。年間総処理水量は277万4千余立方メートル、年間総有収水量は259万4千余立方メートルとなり、有収率は93.51%で、前年度より0.94ポイント上昇している。
建設改良事業としては、浸水対策事業として令和2年度からの繰越工事である沢端1号雨水幹線工事を実施したほか、市内8箇所の公共ます設置工事、マンホール蓋更新工事などを行った。
このように、当年度は構成比率、財務比率、収益率の各指標において良好な状態にあるとはいえない状況が認められ、効率的な事業運営と経営基盤の安定に努める必要がある。前年度でも述べたが、令和3年3月策定の「白石市下水道ビジョン」では、令和12年度の有収水量は約13%減の6,231立方メートル程度に減り、これに伴い使用料収入も減少し、より一層財政状況は厳しさを増すとして、施設更新の平準化や農業集落排水事業の統合などによる事業費の縮減を進めるとともに、適正な使用料負担の確保と持続可能な運営を両立できる使用料体系について検討を進めるとある。薬師堂地区農業集落排水施設を廃止し公共下水道事業に統合したことは、ビジョンに沿った合理化であり評価したい。
今後とも下水道ビジョンに沿って、特にBcpの策定と災害対応力の強化、Ict(情報通信技術)の活用を進めるとともに、不断の事務事業の効率化を推進し経費の節減を図るとともに、下水道接続の普及促進による水洗化率の向上に努め、収入の確保を図られるよう切望するものである。