令和元年度 決算審査の結果 公営企業会計
1.審査の対象
令和元年度白石市水道事業会計決算
令和元年度白石市下水道事業会計決算
2.審査の期間
令和2年7月13日から令和2年8月7日まで
3.審査の方法
この決算審査にあたっては、地方公営企業法第30条第2項の規定により、市長から審査に付された決算書類(決算報告書、損益計算書、剰余金計算書、剰余金処分計算書、欠損金処理計算書、貸借対照表)並びに決算附属書類(事業報告書、収益費用明細書、固定資産明細書、企業債明細書)が、地方公営企業法その他関係法令に準拠して作成され、かつ、企業の財務状況および経営成績を適正に表示しているかどうかについて審査した。
審査にあたっては、関係帳票、証拠書類の提出を求め、さらに経営内容の動向を把握するため、計数分析による比較検討を行うとともに、関係責任者の説明を聴取した。
4.審査のまとめ
1.水道事業会計
令和元年度の経営成績については、総収益は8億5,959万4千余円で、総費用は9億224万3千余円となり、差し引き4,264万8千余円の純損失となった。
この結果、純損失に前年度繰越利益剰余金6億1,737万1千余円を加えた当年度未処分利益剰余金は、5億7,472万2千余円となった。これに減債積立金1億4,271万円と建設改良積立金8,600万円を合わせた利益剰余金では8億343万2千余円となった。
損失計上の主な要因は、収益においては給水人口の減少や節水意識・機器の普及などの影響で、給水収益が前年度と比べ、1,521万2千余円(1.89%)の減少、下水道使用料徴収負担金の増でその他営業収益が1,328万5千余円(177.94%)の増加により営業収益が微減となった反面、費用においては配水および給水費で2,286万1千余円(22.62%)、原水および浄水費で607万1千余円(1.36%)減少した一方で、水道料金関係業務委託の増に総係費が3,814万7千余円(28.68%)増加したことによる。
また、1立方メートル当たりの給水原価288.45円が供給単価263.62円を24.83円(前年度比8.38円)上回っている状況である。
企業債の状況を見ると、借入額が1億90万円、償還額が5,204万余円で、差し引き4,885万9千余円増加し、年度末企業債残高は14億1,842万7千余円となった。
経営分析による収益率では、純損失の影響を受けて、総括的な収益の割合を示す総収支比率が95.27%(前年度96.41%)、営業収支比率が91.86%(前年度93.22%)となっており、その他の利益率も悪化している。
年間の給水状況を見ると、給水戸数13,651戸、32,146人に供給している。これは、前年度と比較すると、給水戸数は12戸、給水人口は508人減少している。
料金収益となる有収水量は299万1千立方メートルで、前年度と比べ7万立方メートルの減少となり、給水収益で1,521万2千余円の減額となっている。
有収率は73.53%(前年度73.13%)と徐々に改善はしているが、依然として低水準にあり、これが、経営を圧迫する要因の一つと考えられることから、「有収率向上基本計画」に基づき、引き続き漏水の原因や地区の特定を行い、有収率の向上を図っていただきたい。
水道事業は市民生活や経済活動を支える重要なライフラインである。しかし、将来予測では給水人口、水需要の減少およびそれに伴う料金収入の減少が想定される一方、老朽化した施設、管路の計画的な更新が喫緊の課題となっている。
これらの課題解決のため、「水道事業アセットマネジメント(資産管理)計画」を策定中(令和元年度・基礎調査、令和2年度・計画)である。これは、30~40年度程度の中長期的な視点を持って、水道施設全体の更新需要をつかむとともに、重要度、優先度を踏まえた更新投資の平準化を図り、財政収支等の見通しを検討する大変重要な水道施設更新計画である。そして、計画策定後は市民や市議会等に対しての説明責任を果たし、信頼性の高い水道事業運営を行っていただきたい。
また、今後とも事務事業の効率化を推進し経費の節減を図るとともに、使用料等の収納率の向上に努め、収入の確保を図られるよう強く望むものである。
2.下水道事業会計
令和元年度の経営成績については、総収益は9億3,604万余円で、総費用は8億9,434万8千余円となり、前年度よりも9,158万9千余円多い4,169万1千余円の純利益を計上することとなった。
この結果、純利益に前年度繰越欠損金を差し引いた当年度未処理欠損金は、14億8,040万7千余円となった。
事業別に見ると、公共下水道事業では、総収益は8億3,124万1千余円で、総費用は7億6,877万余円となり、差し引き6,247万1千余円の純利益となり、農業集落排水事業では、総収益は1億479万8千余円で、総費用は1億2,557万8千余円となり、差し引き2,078万余円の純損失となった。
利益計上の主な原因は、収益においては下水道使用料の改定により営業収益が前年度と比べ、7,284万3千余円(13.33%)と大きく増加した。一方、費用においては、公共下水道事業の使用料等徴収負担金が増加したものの、農業集落排水事業の固定資産除却費3,368万4千余円の減少が影響したものである。
経営分析による収益率では、前年度との比較で、総括的な収益の割合を示す総収支比率が9.98ポイント増加して104.66%と黒字計上となり、業務活動の能率を示す営業収支比率でも12.05ポイント増加して81.95%といずれも良化しており、下水道使用料の改定による営業収益の増加によることが窺える。
企業債の状況を見ると、借入額が3億7,200万円、償還額が8億1,237万9千余円で、差し引き4億4,037万9千余円減少し、年度末企業債残高は85億4,527万4千余円となった。
下水道事業の普及状況は、全体で処理区域内人口24,296人に対し、水洗化人口21,789人で、水洗化率は89.68%となり、前年度より4.55ポイント低下している。年間総処理水量は2,834,365㎥、年間総有収水量は2,636524,743㎥となり、有収率は92.60%で前年度より0.02ポイント上昇している。
建設改良事業としては、管渠整備工事、雨水幹線工事、マンホールポンプ設置工事、マンホール蓋更新工事などを行った。(一部令和2年度に繰越)
平成30年10月使用分より平均31.2%の下水道使用料の引き上げを行っているが、令和元年度から改定額が全面的に反映された結果、純利益を計上することとなった。しかしながら、管渠整備に重点を置いた初期投資に伴う元利償還金が大きな財政負担となっていることに加え、既にある下水道施設の多くが更新の時期を迎え、今後さらに投資的経費が発生することは避けられない。
そのため、「下水道事業ストックマネジメント(施設管理)計画」を策定中(令和元年度~令和2年度)である。これは、将来のアセットマネジメントに発展させていくための重要な土台となる「膨大な施設の状況の把握」「中長期的な施設状態の予測」「下水道施設の計画的かつ効率的な管理」(ストックマネジメント)を目的としている。
この計画も、水道事業アセットマネジメントと同様に大変重要な計画であり、計画策定後は、市民や市議会等に対しての説明責任を果たしつつ、両計画を車の両輪として中長期的かつ計画的な公営企業の運営を行っていただきたい。
また、今後とも事務事業の効率化を推進し経費の節減を図るとともに、下水道接続の普及促進および使用料等の収納率の向上に努め、収入の確保を図るよう切望するものである。